東日本大震災や熊本地震、北海道胆振東部地震など日本で大きな地震が発生するたびに家屋の倒壊が問題となっております。大きな地震に耐えるためには、強度な家を建てることが果たして正しい選択なのでしょうか。
結論から申し上げますと、どの構造で家を建てても地震に対する強さはほぼ変わりません。
ここでは、家の構造が耐震性と結びつかない理由と地震に強い家の条件を紹介しています。
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住宅工法とは、家を建てる際に素材や構造による家の建て方のことです。
住宅工法のそれぞれの特徴は以下の通りです。
木造軸組工法
日本古来の工法である木造軸組工法は、木造住宅において最も一般的な工法です。
構造は基礎の土台に柱と梁で骨組みをつくり、建物を強くするため柱の間などに木材を斜めに入れて地震に耐えられる構造をつくり出します。
補強がしっかり行われていれば建物全体の強度が増します。
木造枠組壁式工法(2×4工法)
世界各国に普及している木造枠組壁式工法は、2インチ×4インチの製材で柱を組み、パネルで壁を箱型構造に作ることで建物を支えます。
地震の際には横揺れを壁全体で支えることで揺れを分散させるため、耐震性能に優れていると言えます。
木造枠組壁式工法(2×6工法)
2×6工法は2×4工法に比べて使われる角材が1.5倍の厚さであり、壁の曲げ応力に対する強さも約2.5倍の強度があります。
2×4工法と同じ枠組壁工法ですが、2×6工法では外壁全体を大断面の壁で支えるため、2×4工法よりも強い家作りができます。
軽量鉄骨構造
軽量でありながら強度に優れた軽量鉄骨構造は、骨組みである柱と梁を木造軸組工法と同じ工法でつくられます。
使われている素材は木材ではなく鉄であるため強度には優れておりますが、室内の温度が外に逃げやすく冬の結露に加えて錆びやすいというデメリットもあります。
重量鉄骨構造
軽量鉄骨構造との違いは鋼材の厚みが6mm以上(軽量鉄骨造は鋼材の厚みが6mm未満)あることです。
主にビルや高層マンションなど大規模建築物をつくる際に用いられますが、一般住宅でも重量鉄骨造住宅は使われており、今後も増加の傾向にあると言われております。
丈夫な太い骨組みのため、外部の袖壁の中に隠す工夫をしないと視覚的に室内に骨組みが出て見えてしまうほか、コストも余計にかかります。耐震性能は軽量鉄骨構造よりもあります。
鉄骨(S)造
柱や梁の骨組みに鉄骨を使用しており、それ以外の箇所には木を用います。鉄骨自体の粘り強いしなやかさが特徴的です。
コンクリートを使用しないため、建物全体が軽量化されコストも抑えられますが、コンクリート造に比べ揺れは大きくなります。
主に超高層や体育館などの広大な建築物などに適しております。
鉄筋コンクリート(RC)造
耐久性に優れた鉄筋コンクリート(RC)造は、鉄筋とコンクリートで建物を支える構造です。
鉄骨とコンクリートの良さが生かされているため、強固で耐震性に優れております。
他の工法と比べてコストがかかることも特徴のひとつです。
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造
鉄骨を支柱として周りに鉄筋を組みコンクリートを流し込むため、RC造の耐久性に加え鉄骨(S)自体がもつ粘り強いしなやかさを兼ね備えております。
中高層以上の規模の大きいマンションなどに多く使われ、耐震性・耐火性・遮音性に優れております。
プレハブ工法
プレハブ工法には、木質系・コンクリート系・ユニット系があります。
木質系とコンクリート系は床や壁をパネルで組み上げていきます。木造枠組壁式工法のように横揺れを壁全体で支えるため、耐震性に優れております。
ユニット系は建物の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で組み立てていきます。
プレハブ住宅ですので、工期は短く修理や増改築が容易です。
建築基準法にある耐震基準では、震度6強や7程度の数百年に1度起きる地震に対して倒壊・崩壊しないことが定められております。
建築基準を満たしているのであれば、家がどの構造で建てられていても地震に強い構造であることが言えます。
ただし倒壊・崩壊しないことが基準となっているため、倒壊・崩壊はしていないが亀裂などの損害が出る可能性はあります。
2016年の熊本地震では震度7の地震が連続して発生しており、1回目は倒壊を免れても2回目に耐えることができなかった家は多かったと思われます。
建築基準法関係法令集 2023年版
どの住宅工法も耐震性に優れておりますが、施工を行う業者がいい加減な作業をしていては地震に強い家をつくり出すことはできません。
固定する部材や固定の方法が適切でなかったり、柱や梁の僅かなずれがあったりすれば、耐震基準の満たない家になります。
ただし倒壊・崩壊しないことが基準となっているため、倒壊・崩壊はしていないが亀裂などの損害が出る可能性はあります。
設計者や現場監督が確認するだけでなく、第三者機関に依頼してダブルチェックを行うようにしましょう。
耐震等級とは地震に耐えられる性能を等級で表した数字のことで、3段階に分けられております。
建築基準法の基準に達している状態が耐震等級1で、多くの住宅はこれに該当します。
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の耐震性が求められており、病院や学校などの避難所となる建物レベルを指します。
耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の強度です。防災の拠点となる警察署や消防署などの建物レベルを指します。
大きな地震から家を守るには耐震等級3にする必要があります。
耐震等級3の家が地震に強いことは言うまでもありませんが、この先何十年も安心できるとは限りません。
たとえ新築時に耐震等級3の家でも劣化により地震で倒壊する恐れが十分にあるため、耐震性能を維持していく必要があります。
家が劣化する主な原因(経年劣化は除く)は以下の2つがあります。
- 壁内の結露により建物を支える柱や梁の腐食や錆び
- 木造住宅に多く見られるシロアリ被害
壁内の結露はどの工法でも発生する可能性があり、やがて家の内部から劣化が始まります。
家全体が高気密・高断熱であれば家の中に結露が発生するリスクは大幅に減少しますが、全てをカバーすることは容易ではありません。
対策としては換気や除湿などがありますが、冬の場合はせっかく温められた室内を冷やすことになってしまうため判断に悩まされます。
シロアリ対策は長く安心して住むことを考えると怠るわけにはいきません。
鉄筋コンクリート造であればシロアリ問題に発展しないと言われることがありますが、安心することはできません。
コンクリートは木材ほどの被害にはなりませんが、木材が使われている場所があればコンクリートのわずかな隙間から侵入し、木材まで到達するため注意が必要です。
耐震等級3を維持した状態の家であれば、家の構造がどの工法で建てられていても崩壊は免れるかもしれません。しかし、これだけでは地震に強い家の条件は満たせません。
2011年3月に発生した東日本大震災では、住宅が液状化や宅地造成地の崩壊など地盤による被害が数多く発生しました。
家は無事でも、足元の地盤が弱ければ地震に強い家の条件は満たされないでしょう。
家だけでなく地盤にも注目すべきであり、地盤を強くするためには地盤補強をすることもポイントとなるでしょう。
日本は地震大国と言われるほど地震の発生が多い国です。日本で生活をしている限り、地震に対しての備えは必要不可欠です。
これまで地震に強い家の構造について解説してきましたが、どの家の構造においても地震に対しての強さはほぼ変わりません。
重要なことは、揺れにくい地盤で耐震等級が3であり耐震性が維持されていることです。
これから家を建てられる方や、大規模なリフォームを考えている方に少しでも参考にしていただければ幸いです。